設備の更新や研究テーマの変更で、使わなくなった分析機器。処分を考えるとき、廃棄費用や搬出の手間とともに、目を向けたいのが環境への負荷です。
機器の廃棄処理にはCO2排出が伴います。さらに、新品へ買い替える場合には、新しい機器を製造するための資源やエネルギーも必要になります。
こうした負荷は、普段の業務では見えにくいものです。今回は、環境省のデータを使った参考試算から、その大きさと、売却・再利用という選択の意味を考えます。

分析機器には、金属や樹脂、電子部品など、多くの資源が使われています。原材料の調達から部品の加工、組み立てまで、機器をつくる過程ではエネルギーが使われ、温室効果ガスが排出されます。
その規模を考えるため、環境省の「排出原単位データベース」を使って試算してみます。
データベースに掲載されている「分析器・試験機・計量器・測定器」の購入者価格ベースの原単位を使うと、購入金額100万円あたり、約2.4トンCO2換算という計算になります。これは、杉約170本が1年間に吸収するCO2量に相当する大きさです。
機器の価格として見る100万円と、その背景にある資源・エネルギーの使用。数字にすると、機器を新たにつくることにも環境負荷が伴うことが見えてきます。

※購入金額100万円を想定し、環境省の平均的な排出係数(2005年の産業連関表ベース)から試算。杉の換算は、50年生の杉1本の年間CO₂吸収量約14kgを基準としています。
※この試算値は、売却によるCO₂削減量を示すものではありません。
出典:環境省 排出原単位データベース(Ver.3.5)
出典:三重県 森林・林業の働きと役割
機器の環境負荷は、製造・調達の段階だけではありません。使い終えた後の回収・運搬や、材質に応じた廃棄処理にも排出が伴います。
たとえば、合成繊維・廃タイヤを除く産業廃棄物の廃プラスチックには、焼却量1kgあたり2.56kgのCO2排出係数が示されています。
この係数を使うと、対象となる廃プラスチック10kgを焼却する場合、約26kgのCO2が排出される計算になります。
参考試算の条件 | 焼却に伴うCO2排出量 |
|---|---|
対象となる廃プラスチック1kgを焼却 | 約2.6kg |
対象となる廃プラスチック10kgを焼却 | 約26kg |
実際の分析機器には、金属・樹脂・電子部品などが使われており、分解や選別、資源回収などの工程もあります。そのため、機器全体の重量だけで廃棄時の排出量を求めることはできません。
それでも、廃棄に環境負荷が伴うことは、機器を手放す際に考えておきたい視点です。

今の研究室で使わなくなった機器でも、別の研究機関や企業では必要とされることがあります。
まだ使える機器を売却し、次の利用者へつなぐことで、その機器に使われた資源や技術を、引き続き活かせます。再利用には、環境負荷を考えるうえで、次の2つの意味があります。
再利用できる機器を次の現場へつなぐことで、その時点での廃棄処理を回避し、機器を使い続けてもらえます。
役目を終えた機器の中に、まだ使えるものはないか。処分を決める前に確認することが、資源を有効に活かす第一歩になります。
次の利用者が新品の代わりに中古機器を選べば、新規製造に伴う資源やエネルギーの使用を抑えることにつながります。
先ほどの参考試算で見たように、機器の製造・調達にも環境負荷があります。既存の機器を活用することは、その負荷を見直すための選択肢です。
「使わなくなったら廃棄する」から、「まだ使える機器を、必要な現場へつなぐ」へ。機器の売却は、資源の循環を具体的な行動にする方法の一つです。

分析機器の再利用は、機器の寿命を延ばし、使える資源を長く活かす取り組みです。
廃棄や新規製造に伴う環境負荷を考え、設備整理や更新の際に再利用を検討する。こうした選択は、カーボンニュートラルに向けた取り組みの一つになります。
機器を次の利用者へつなぐ活動は、資源循環への具体的な取り組みとして、社内外に紹介することもできます。
機器の廃棄には、搬出・運搬・処理などの費用がかかります。買取が成立すれば、その負担を見直せるほか、機器に残る価値を売却収入として活かせます。
得られた資金を、次の研究開発や設備投資へ。使わなくなった機器の整理を、次の活動を支える機会に変えられる可能性があります。
高度な分析機器には、多くの資源と精密な技術が使われています。使用目的が変わり、手放すことになっても、その価値が失われるとは限りません。
必要とする研究機関や企業へ機器を引き継ぐことで、資源と技術を次の現場で活かせます。機器の売却・再利用は、限られた資源を循環させる選択です。
機器の環境負荷は、使っている間だけではありません。製造・調達から処分まで、目に見えない資源やエネルギーの使用が伴っています。
だからこそ、廃棄を決める前に、まだ活かせる価値がないか確かめることが大切です。
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